ベルガモット・カラブリアンとは?

ベルガモット・カラブリアンとは ベルガモット

「ベルガモットの香り」と聞いて、思い浮かぶのはアールグレイや香水、アロマといった爽やかで少しビターな芳香ではないでしょうか。
その香りの中核を担うのが「ベルガモット・カラブリアン(Calabrian Bergamot)」──イタリア南部の限られた土地でのみ生まれる、極めて希少で高品質な柑橘です。

カスティアーロ(Castagnaro)

実はベルガモット=ほぼカラブリア産

カラブリア州の地図

意外に知られていませんが、世界に流通するベルガモット精油の90%以上は、イタリア・カラブリア州で生産されています。
しかも、実質的に「高品質なベルガモット」はカラブリア以外ではほとんど成立していません。

ベルガモット畑

栽培が可能なのは、カラブリア州南部のごく狭い海沿いの地域(ヴィッラ・サン・ジョヴァンニからモナステラーチェまでの細長い沿岸地帯)。

イオニア海に面したこのエリアは、石灰質の土壌、冬の湿度、昼夜の寒暖差、海からの風などが絶妙に重なった土壌を持ち、ここでしか得られない成分構成を生み出します。

カラブリアン・ベルガモットはおそらくビターオレンジとライムの交配種ですが、正確にはわかっていません。そこ以外では全く別の柑橘になってしまいます。

たとえばその他の地域や他国で同じ木を育てても、香りが鋭く単調になり、ベルガモット特有の「まろやかな芳香のグラデーション」が出せません。

香りの構造─カラブリアン・ベルガモットが評価される理由

カラブリアン・ベルガモットの果皮には350種類以上の香気成分が含まれ、リモネン、リナロール、リナリルアセテート、ベルガプテンなどが香りを作り、その精油はトップ・ミドル・ベースという3層構造の香りを持ちます。

ベルガモットの香りの構成:トップノート・ミドルノート・ラストノート
  • トップノートでは、爽やかで明るいシトラス香が立ち上がり、
  • ミドルノートでは、ラベンダーやネロリのようなフローラルな甘さが広がり、
  • ベースノートでは、ほのかにビターで落ち着いたウッディな余韻が続きます。

この層構造はベルガモット全体に見られますが、カラブリア産はそれぞれの層の香りがなめらかに連続し、雑味がないことが際立ちます。

その理由は、リナロール、酢酸リナリル、ベルガプテン、リモネンなどの芳香成分の含有比率が自然界では極めてバランス良く整っているため。とくに酢酸リナリルが豊富なことで、香りに独特の“丸み”が生まれます。

このため、人工香料ではこの構造を完全に再現できず、香水ブランドやティーブランドがカラブリア産にこだわるのは、その香りの質感が明確に異なるからなのです。

ベルガモットはどんな香り?匂いの構成について
ベルガモットは、ミカン科に属する柑橘類の果実で、主にイタリア・カラブリア地方で栽培されています。果実そのものを食用とすることは少なく、その魅力は皮から抽出されるエッセンシャルオイルにあります。このベルガモット精油は、アールグレイティーの香り...

香りの文化を支えてきた“地名入りの果実”

「アールグレイ」の香りづけに用いられることで、ベルガモットの名は世界的に知られるようになりました。
その背景には、19世紀から続くカラブリア産ベルガモットの輸出と、ヨーロッパの香料文化との結びつきがあります。

ベルガモットは当初、医薬的効能(抗菌、鎮静など)が注目されていた果実で、薬局で売られる精油としての側面もありました。
やがて、グラース(フランス)を中心とした香水産業の発展とともに、“Calabrian Bergamot”の名は、香りの原料としての高級ブランドとなったのです。

現代でも多くのハイエンド香水ブランド(ディオール、アクア・ディ・パルマ、シャネルなど)が、原料として「カラブリア産ベルガモット使用」と明記するほど、その産地の名前が信頼を担っています。

ベルガモットの香りは人工では代替できない?

香りの技術が進化した今でも、ベルガモット・カラブリアンの精油は「再現できない香り」の代表格です。
人工香料では、個々の成分を合成することは可能ですが、ベルガモットの香りを構成する微量成分は200〜300種類にも及び、その微妙な比率が香りの深みを生み出します。

冷圧搾法(コールドプレス)で抽出するベルガモット精油

また、カラブリア産の精油は冷圧搾法(コールドプレス)で抽出されるため、熱による香気成分の損失がなく、揮発の順序や残り香の質に大きな違いが生まれます。
そのため、香りの経年変化や奥行き、残香の質感まで含めて、「本物のベルガモット」はカラブリアの農園でしか得られないのです。


ベルガモット・カラブリアンは、単に香りが「良い」果実ではありません。
イタリア南部の風土、歴史、成分、抽出法、そして文化が凝縮された、地名を背負う香りの宝石です。

次にアールグレイを口にしたとき、あるいは香水のトップノートを感じたとき、その背後にはカラブリアの海風と畑、そして人の手がある。
そう思うだけで、香りの世界はぐっと奥深く感じられるはずです。

出典:Redazione Calabria News 24, Gusto Ribelle: Cedro e bergamotto, agrumi e odori di Calabria, 2025年8月9日

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